晴れ、土砂降り
今日は色々考えさせられた。
春に退院して最近かぜがきっかけで熱が下がらずに入院したMばぁちゃん。年は80歳ではあるがきりっとして人の悪口などいわない、頭のいい素敵な女性だったMばぁちゃん。それが最近お嫁さんの悪口を言ったり、ちょっとすねたようなことを口走ったりしていた。その原因が今日やっとわかった。
Mばぁちゃんは家族の勧めで老人ホームへ行く算段をしていたらしい。息子さんやお嫁さんがそうするように促し承諾はしたものの、やはり色々思い悩むところがあってだんだん今のような状態になってきているようだ。
昨日私は休みだったのだが、その間に家族とひと悶着あったようだ。Mばぁちゃんはやっぱり老人ホームには行きたくない、できるならここの病院にいられる間ずっといたいと言い出したらしく、その話を聞いた次男のお嫁さんが逆上......
Mばぁちゃんの心の中は寂しさと疎外感でいっぱいなのだろう。家に帰ってももう自分の居場所がないというなんとなくではあるが確信のもてる感触。そして、以前は毎日誰かが病室に来てはなんだかんだと世話を焼いていたが最近では客足が少ないようで、そのこともMばぁちゃんの心に深く影を落としているようだ。ある程度体が不自由で、でも元気な老人にとって、老人ホームへ移るという選択はかなりつらい選択肢なのだと思う。その寂しさや阻害感、もって行き場のない怒りや情けなさがお嫁さんたちの悪口に変わって口からあふれてくるのだろう。それに、そうやって「私は嫁達が嫌い!」と自分に言い聞かせて自分から家族離れをしようとがんばってもいるのだろう。そんな事をおもいながらMばぁちゃんがとてもいとおしく思えてきた。
介護職員の話によると、最近夜になるとちょっと痴呆めいた言動がみられるようだ。今までは一切しなかった不潔行為も見られるようになったらしく、いろんな感情の交錯する中でMばぁちゃんの人格そのものが侵され始めているという現状を垣間見てしまった気分になる。
面会客が帰ったころを見計らって再びMばぁちゃんの部屋へ......
ベッドの上でぼんやりと壁を見つめて座っているMばぁちゃんはいつになく小さく見えた。私が声をかけるとMばぁちゃんは力なく笑って、私だと気づいて、はっとわれに返った。
ベッドの傍らに座って、「そんなに心配しなくてもMさんはここの人気者だからさ。院長も短気で口悪いけど、むやみによその施設や病院に追い出したりはしないさ。Mさんが居たいだけ居ればいいって思ってるよ。」とぼそぼそと話す。
Mばぁちゃんはいつものにっこり顔で「ありがとねぇ」と言って私の後ろ髪の尻尾で遊んでいる。
昨日から色々と気疲れしただろうと横になることを促し、Mばぁちゃんが一息つくのを見届けてから部屋を出た。
夕食が済んでなんとなく母親に電話をしてみる。
「あんたはいつもおみかぎりだねぇ♪」
とか軽口をいいながらちょっと嬉しそうな声にほっとするみかちゅう☆〃